有永浩太さんを訪ねに能登島へ
有永浩太さんのガラスに出会ったのは、忘れもしない、能登の塗師である赤木明登さんのお宅のテラスでした。新緑眩しい昼下がり、テラスに布を敷き、そのうえに並べてくださった、室町時代や江戸時代の漆器、そしてご自身のぬりもの。それらを眺めながら白ワインを飲もうということになり、その時棚から取り出された、丸っこいワイングラス。柔らかなフォルムなのに、何か凛とした静謐さと、高貴な永遠性を湛えた品格。それは眺めて、手にとって、口に触れて感じる、その安らぎ。家に帰りネットでどうにか一脚探し出して、それ以来愛用していました。そして色々な縁が繋がり有永さんとお知り合うことが出来、そしてこの度能登島の工房に訪問させて頂けることとなりました。
大阪出身の有永さんは大学でガラスの製作を学んだ後、新島のガラス工房でガラスづくりをされ、その後能登島へ移住。一度金沢へ移られますが、その後ご自身の工房を能登島につくられました。能登島の工房はもともと有永さんの叔母様のお宅だったそうです。能登島に着くと感じた、たおやかでピュアな空気。ああ、有永さんのガラスにぴったりだ、と感じました。
工房はガラス職人のものとしてはかなり小さいそうです。でもそうだからこそ自分のやりたい、やるべきことが、自分の望むうちで出来る。「ガラスはほかのものづくりと違って成形自体はあっという間。それまでの準備やその後の過程が長いんだよね。」ガラスと自分が向き合う時間への敬意と意志と愛。ここに有永さんのガラスが持つ、永遠性の源があるのかも知れません。
また有永さんのガラスづくりの特徴は、その息の吹き方にあるのだそう。それは昔のヨーロッパのガラスづくりに通ずるそうです。ガラスに吹き込まれた、今を生きる人間と連綿と続く伝統の息吹。だから有永さんのガラスは時代と場所を超えた、普遍的な美しさがあるのでしょう。
ガラスづくりと共に営まれる、奥様であられる史歩さんとの安らかで丁寧な暮らし。穏やかで規則正しい日々の製作と、和やかでにこやかな日々の生活。お二人の温かく、凛として、リラックスされたお姿、お言葉。能登島、ガラス、浩太さん、史歩さんがすっと重なり合うのを感じました。
有永さん、非常に人気を得ておられる作家さんのため、個展では即完売、ネットでも滅多に在庫はないという状況なのですが、この度ご厚意により数点を頂けることになりました。ひとつひとつが、それぞれ違う味わいを持つガラスたち。その素敵な空気感、存在感を、是非見て、お手にとって、感じて頂ければと思います。
0コメント